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カワウソ祭です! これまでこの連載で紹介してきた女友達は、比較的積極性が高く、よく目立つタイプの人が多かったかと思います。

 

では、カワウソはわゆる「サバサバ系」とか「男勝り」とか、そういった人だけを最高な友達だと思っているのかいうと、決してそうではありません。

 

インパクトが強く、わかりやすいエピソードを持っている人を選ぶと、パワフルなメンバーが揃いがちですが、ステレオタイプな“女の子らしさ”を自分の個性にしている最高な友達もいます。

 

ただ、彼女たちの魅力を表現するのはちょっと難しいのです。

今回はその辺りについて考えます。

 

 

今回のお話|おまじないを使うマイちゃんの話

 

マイちゃんは「透き通るほど白い肌」という、おとぎ話に出てくる表現そのままの色白な女の子でした。

黒い髪に赤い唇、大抵いつもスカートやワンピースを着て“女の子らしく”しています。

 

いつもニコニコして愛想がよいのですが、口数は少なめ。大勢で集まる場ではほとんど話さず、でも嬉しそうにしてくれます。少人数の場では結構話してくれるのですが、質問になんでも答えるのではなく、はぐらかして詳しく教えてくれないことも多いのです。

 

どうやら、彼女なりに「他人に話すべきではないこと」の基準が定められているようでした。

 

 

謎多き女子とおまじない

 

マイちゃんと一緒に盛り上がった話で印象深いのは、子供の頃にマンガ雑誌の『なかよし』や『りぼん』に載っていたような、簡単なおまじないを試すのが好きだったということです。

 

消しゴムに好きな人の名前を書いて、誰にもバレずに使い切ると恋が実るとか、願いを込めたミサンガを編んで切れるまで結んでおくとか、願掛けをして小指の爪だけ7ミリ伸ばすとか、ついやってみたくなる色々なおまじない。

 

覚えている限りあれこれと挙げた中でも、マイちゃんが特に気に入っていたおまじないは「よく晴れた夜、器に入れた水へ月の光を映し、それを飲んで眠ると美しくなれる」というものでした。

 

寝る前に適量水分を取るのはそりゃ体にいいと思いますが、月の光を取り込むというのが絶妙に心をくすぐります。

 

カワウソが「わかるよ、日光より月光が入った水の方が魔法を使えそうだよね」というと、マイちゃんもニヤリとしてうなずきました。

 

そして「おまじないって、1人でコッソリやるってところも好き」と話してくれました。

 

 

コッソリと黙っていられる精神力

 

あるとき、カワウソは江戸時代前期の古典『宿直草』を読む機会がありました。

萩田安静という人が奇譚(不思議な話)、怪異譚(かいいたん)を編纂(へんさん)したもので、その中の「女は天性肝深き事(おんなはてんせいきもふかきこと)」に衝撃を受けました。

 

ざっくりとした概要はこのようなものです。

 

“あるところに、好きな男の家へ夜な夜な通う健気な女がいた。

歩きづらい道も暗い道も毎日必死に通ったが、ある日、前日の雨で小川にかけられた小さな橋が流されてしまっていた。なにか代わりになるものを探すと、浅瀬に1体の死体があった。

これ幸いと踏んで渡ろうとすると、驚いたことに死体が着物の裾を噛んで離さない。女は慌てて引き剥がし、しばらく逃げてから「これはおかしい」と考え直した。

戻って調べると、死体の胸を踏めば口が閉じ、踏んだ足を上げれば口が開くのであった。

「やっぱり死体に意識はなかったのね」と納得した女は、いつも通りに男の家へ行き、布団の中でそのことを褒められたげに話した。

 

すると男は仰天し、二度と女と会うことはなかった”

 

この後に、話の締めくくりが続きます。

 

“元来、女は男より肝が据わっているものである。それを隠すからこそ女らしくてよいのだ。

似合わぬ手柄話をしたり、怖いものなどない、などと言う人は、たとえその人に恋する身でも、いっぺんに興醒め(きょうざめ)してしまう。

平民の女でさえ、肝の太い者は人にじろじろ見られるものである。ましてや位の高い人なら尚更である。

松虫鈴虫の他の、変わった虫を見たときも、「あ怖」などと答える方が、すましているよりかわいげがある。”

 

(『江戸怪談集〈上〉 (岩波文庫) 』参照、意訳)

 

まず死体を踏んづけるのも衝撃ですが、怪奇現象を冷静に分析するのもすごい。

そんな出来事があったら、カワウソも絶対に恋人に話します。

 

しかし、締めくくりは「女の方が肝が太いんだから、男には変わった虫を見ただけでも『あ怖』と言っておきなさいよ」なのです。

 

何がかわいげだ。凄いことがあったんだから、聞いてくれよ!!!!

 

あまりに面白かったので、カワウソはこの話をマイちゃんほか複数の友人に回し読みしてもらいました。

 

「私も言っちゃうな」「死体なんて踏めないよ」「僕はむしろ話してほしい」などと盛り上がるなか、唯一マイちゃんだけが「私は踏むけど、永遠に黙っていられるよ」とニコニコしていたのです。

 

月光で輝く女性にも強さがある

 

見た目も女の子らしく、いらないことは言わず、かなり「かわいげ」のあるマイちゃん。

でも彼女のことを「か弱く、何も知らず、守ってあげたいタイプ」だと思うと大間違いです。

 

マイちゃんは闇夜で死体を橋にできるけれど、その事実を怖がってしまう人を思いやって黙っているだけです。

 

マイちゃんを褒めると、本人は「自己主張する人もすごいよ」と言います。

 

「私は黙ってニコニコしとるじゃろ、田舎のなまりが恥ずかしいし、ポンポンと喋るのに慣れんだけよ。なのに、私のことを勝手に良く思う人がおるんよ。それが面白いから、黙っとることも多いよ。でもそれで、都合がいいこともあるからね。私、頑固で難しい性格よ」

 

マイちゃんの不言実行は凄まじく、いつのまにか仲間内でも特に優しくて人気のある男の子と付き合い、大学の特待生や交換留学生に選ばれ、希望通りの企業に就職していきました。

 

女性も自分を主張しようという近代的な思想、その先導として重要な言葉が、平塚らいてうが1911年に雑誌『青鞜』の創刊に寄せた「原始、女性は太陽であった」です。

 

「元始、女性は実に太陽であった。真正の人であった」、そして「今、女性は月である。他に生き、他の光によって輝く、病人のような蒼白い顔の月である」と続きます。

 

当時の女性は社会に出ることなく、家事と育児にいそしむ「良妻賢母」が最も良い生き方とされていました。その姿を月に例え、自立を呼びかけた言葉は大きな反響を呼んだと言います。

女らしさの正解が誰かに用意されていて、それ以外は間違いというのは変なことで、令和を生きるカワウソは、太陽のような生き方だけが素晴らしいわけでもないと思うのです。

 

コッソリと月光を飲んでいたマイちゃんのことを思うと、月だって決して他の光によって輝くばかりではなく、自ら選んだ範囲をほの明るく照らして、闇夜を導いているはずです。

 

(カワウソ祭/ライター)

 

第1回
スナックカワウソの最高な夜#1「カッコいいナナさんの話」
第2回
スナックカワウソの最高な夜#2「強い乙女なユキさんの話」
第3回
スナックカワウソの最高な夜#3「マジでモテるアミちゃんの話」
第4回
スナックカワウソの最高な夜#4「ずっと独身で生きたエイコさんの話」
第5回
スナックカワウソの最高な夜#5「白馬に乗ったお姉様ミナさんの話」
第6回
スナックカワウソの最高な夜#6「生命力と怒りの神カヤさまの話」

 

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