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不倫されるということは、不倫相手が誰であってもつらい経験でしょう。

 

ただ、不倫相手が自分の母親だった、となれば、つらさと衝撃度は数倍にもなります。

 

今回は、そんな衝撃的体験をした、菜々子さん(仮名)に一部始終を語っていただきました。

 

前編では、20歳の菜々子さんが、憧れの画家で50歳のAさんと銀座のクラブで出会い、結婚することになった経緯をご紹介しました。

 

後編では、母親との不倫が発覚し、その後どのような決断を菜々子さんしたのか、をご紹介していきます。

 

 

同居生活はうまくいっていた。と思っていたけれど……

 

新婚生活は彼の持ち家でスタートしました。
 
シングルマザーで苦労して私を育てあげてくれた母親と同居するのは、私にとって自然な流れでした。
 
ただ、彼と母親がうまくいくかは心配でした。
 
頑固でお金持ちで苦労知らずのおぼっちゃんだった彼と、苦労の連続で辛酸を舐めてきた母親とは、価値観も生活スタイルも、なにもかも異なると思ったからです。
 
でも、心配は杞憂に終わりました。
 
ふたりはすぐに意気投合、同世代でしかできない話題もできるので、彼も嬉しかったようです。
 
よかった。同居は成功だった。そう思って安心しきった一年後、事件は起こりました。
 

浮気じゃない。本気なんだ。

 

私は子どもを保育園にあずけ、週に一回だけ絵画教室の講師のバイトをしていました。
 
どうやら彼のような著名な画家になる才能はなさそうだとその頃には悟っていましたが、やっぱり絵が好きだったんです。
 
自分の好きな絵の仕事を増やせたらいいだろうな、子どもが大きくなったらもっと本格的に絵を学びなおしたいと思っていたんです。
 
あるとき、子どもをあずけて絵画教室に来てみたら、生徒は一人も来ていませんでした。
 
私が日時を勘違いしていたんです。
 
あーあ、やっちゃった、と思いながら、自宅に帰ると……最悪なことに、彼と私の母親がリビングで濃厚接触をしている現場に遭遇してしまったのです。
 
立ちすくみ、口がきけないほどの衝撃を受けている私に、彼は言いました。「申し訳ない。お母さんに本気になってしまったんだ」と。
 
私はちょっと笑ってしまいました。不思議と、母親に対する怒りはありませんでした。
 
母親が、私の夢のために自己犠牲を強いてきたことを知っていたからです。
 
彼女の20代、30代は、恋愛なんてする余裕がなかったのです。
 
私が憎んだのは、彼の方です。彼はモテます。
 
いくらでも、ほかの女性を見繕えたはずなのです。
 
それなのに、よりにもよって、なんでこんな近場で、一番私が傷つく相手を選ぶなんて。
 
なんで、母と私の仲がこじれるようなことをしたのか……彼に対する猛烈な怒りを感じたあと、私は悟りました。
 
私、彼よりも母親の方を何倍も愛していると。
 
私は子どもを連れて家を出ました。今は彼と別居中です。彼は母と同居しています。
 
母は私と一緒に子どもを育てたいと言いましたが、私が拒否しました。
 
「お母さんはあの家に住んでいてほしい」と言いました。
 
母と彼の睦みあいを見てしまったとき、母も彼に本気なのだと気づいていたからです。
 
彼と離婚するべきなのか、彼と母の関係をどう捉えるべきなのか、答えは出ていません。
 
今現在たしかなことは、彼との関係が切れたとしても、母との関係は切りたくないということだけです。
 
こんな風に感じる私は、究極のマザコンなのかもしれません。
 
(今来 今/ライター)
 
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